albatrosary's blog

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ユーザエクスペリエンス(UX)白書という存在

ユーザエクスペリエンス(UX)というのは何か良さそうなものだと思う。ただその定義が曖昧なため色々な資料やレポートを読んでいてもしっくりするものとしないものがあります。色々読み回しているうちに(少し古いですが)「ユーザエクスペリエンス(UX)白書 〜 ユーザエクスペリエンスの概念を明確にする」というレポートが「 ■公開資料 - hcdvalue」にありましたのでご紹介すると共にメモとして書き留めます。

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UX白書(日本語訳版).pdf

エントリーのきっかけですが HTML5 Experts.jp でUX特集が行われていて、すっと理解できるものととそうでないものがありましたので自分の考えを整理する意味も含めています:

連載 | Experts Opinions 「UX」 | HTML5Experts.jp

はじめに

UXという分野は、システムの利用を通じて人々が持つ経験について「研究」「デザイン」「経験の評価」を扱っている:

  • 現象としてのUX
  • 研究分野としてのUX
  • 実践としてのUX

現象としてのUX

現象としてのUXには次の特徴がある:

  • UXは一般的な概念としての経験の一部分で、UXはシステムを通じてより限定的
  • UXはシステムの出会いを含む
  • UXはある個人に固有のもの
  • UXは過去の経験とそれに基づく期待に影響される

UXでないものとは?

  • UXは人に焦点を当て技術主導のものではない
  • UXはあるシステムを単独で利用する個人だけに関するものではない
  • UXは認知行動分析やユーザを「人間情報処理系」として観測することではない
  • ユーザが感じるユーザビリティはUX全体に影響を与える典型的な局面ではあるがユーザビリティとUXは同義ではない

経験する

「経験する」という動詞は、システムと出会うときの知覚・認知の流れと解釈、また、その結果として生じる感覚を変化を示し、人それぞれ異なった方法でシステムとの出会いを経験する。この考え方はシステムと出会う経験に関する個人的及び動的な性質を重視するもの。

ある経験

「ある経験」という名詞は、始まりと終わりがあるシステムとの出会いを示す。「人がシステムと出会う時間をどのように経験したのか」という全体的な意味を表す。この考え方は、経験の動的な性質よりも、経験の結果と記憶を重視する。「ある経験」は個人あるいは集団とシステムとの出会いを示しているため個人的な性質を特に強調するものではない。

共経験

「共経験」「共有経験」および「集団経験」は、ある状況の中に位置づけられた社会的に構成されたものと解釈されるような経験を示す。ここではシステムとの出会いだけでなく、構成している人間やある状態を一緒に経験する人間も重視している。

これらの用語が経験における特定システムの役割を考慮せずに使われる場合は「ユーザエクスペリエンス」についての議論は意味をなさず、一般的な意味合いでの「経験」と呼ぶ方が適切。

ユーザエクスペリエンスの期間

ユーザが実際に利用したユーザエクスペリエンスの中心となるものだが、それだけではUXに関連するすべてをカバーしているとは言えない。これと「経験する」「ある経験」の間にある差とはUXに焦点を当てるときに適切な期間が重要になる。つまり、誰かが非常に短い一瞬に何かを経験するのか何ヶ月もしくはそれ以上に及ぶ体験の中で得られるエピソードなのか。

UXについて議論したり話をするときには対象となる期間を明確にすることが重要で、それらは

  • 一時的UX
  • エピソード的UX
  • 累積的UX

の三種類に分けることができる。もっと長い期間で考えるとUXはライフサイクルなどで構造化することもできる。さまざまな経験から色々な順番で互いに幾重にもなるのでUXに決まった流れはない。

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実践としてのUX

ユーザエクスペリエンスデザイン(UXD)は人間中心設計の原則(HCD)に由来している。人間中心設計は以下のように要約できる:

  • デザインのプロセスにおいて関心事の中心をユーザとすること
  • ターゲットユーザ層にとって重要なデザイン的側面は何か特定すること
  • プロセスの繰り返しによりデザインを開発していくこと、それにユーザの参加を促すこと
  • デザインを評価するためにユーザ固有の要素に関するエビデンスを収集すること

UXDは原則上はHCDとの違いはないが、より成熟した形でHCDの実践としていくつかの重要な側面を付け加えている。

実践的な概念に「UXハニカム構造」というのがあります:

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User Experience Design

UXハニカム構造は次の要素からなります:

  • Useful. As practitioners, we can’t be content to paint within the lines drawn by managers. We must have the courage and creativity to ask whether our products and systems are useful, and to apply our knowledge of craft + medium to define innovative solutions that are more useful.
  • Usable. Ease of use remains vital, and yet the interface-centered methods and perspectives of human-computer interaction do not address all dimensions of web design. In short, usability is necessary but not sufficient.
  • Desirable. Our quest for efficiency must be tempered by an appreciation for the power and value of image, identity, brand, and other elements of emotional design.
  • Findable. We must strive to design navigable web sites and locatable objects, so users can find what they need.
  • Accessible. Just as our buildings have elevators and ramps, our web sites should be accessible to people with disabilities (more than 10% of the population). Today, it’s good business and the ethical thing to do. Eventually, it will become the law.
  • Credible. Thanks to the Web Credibility Project, we’re beginning to understand the design elements that influence whether users trust and believe what we tell them.
  • Valuable. Our sites must deliver value to our sponsors. For non-profits, the user experience must advance the mission. With for-profits, it must contribute to the bottom line and improve customer satisfaction.

現状UI/UXを職種とするデザイナーで「ユーザエクスペリエンス(UX)白書 」で述べられている事柄、「UXハニカム構造」に関する事柄を系統立てて話をしている方はほとんどいないように思えます(ただHTML5 Experts.jpの記事に関しては良く議論できていると思いました)。

最後に

エンタープライズでアプリケーション開発していて最も困ることは「UXを考慮して作って」とか「今風のUXで」とかUXという言葉定義無しに物事が進むのがよろしくないと思いメモしました。読んだ限りの感想ですが、UXはそれほど曖昧なものではなく定義そのものはここ数年で明確になってきているのではないかと思います。